中国の四大古典小説の一つに数えられる“三国志演義”は、この国の支配を目指す人の誰もが預言だと受け止める一文で始まる。
“天下とは、分裂の時代が長ければ統一されるに違いなく、統一の時代が長ければ分裂するに違いないものである。昔からずっとそうだ”
中国の習近平国家主席が今日直面している最大の疑問はおそらく、この天下が分裂に向かっている段階にあるのか、それとも統一に向かっている段階にあるのか、というものだろう。
香港市街を埋め尽くした大規模なデモ行進は、北京から遠く離れた周縁部が中国政府の手から滑り落ちつつあることを示唆しているのかもしれない。
7月1日にはデモの参加者が立法会(議会)庁舎の入り口を破って侵入し、内部を傷つけたり中国支配のシンボルを汚したりした。
無礼の極みということか、英国統治時代の旗を議場に掲げることまでした。
庁舎の外では数十万人が平和的に行進し、北京の中国政府が自分たちの生活に干渉することへの怒りを表明していた。
香港ではここ数週間、刑事事件の容疑者を香港から中国本土に引き渡すことを可能にする法案に反対する大規模なデモが行われている。多いときには、200万人もの人が一度にデモ行進に参加した。
香港の人口は740万人だから、この比率に着目するなら、史上最大級のデモ行進が何度か行われた計算になる。おかげで香港当局は、この法案の審議を無期延期せざるを得なくなった。
しかし、デモに参加した市民の多くは、これは絶望感に駆られた行動であり、香港で自由に意見を表明できるのはこれが最後だと考えて街頭に出てきたと話している。
習主席のこれまでの行動から判断するなら、その通りかもしれない。
中国北西部の周縁部に当たる新疆ウイグル自治区については、共産党が本土からの分離を防ごうとかなり極端なことをしている。
米国務省の推計によれば、200万人ものイスラム教徒――同自治区の人口の約10%に相当する――が強制収容所に送られている。イスラム教徒であることがその主な理由だ。
中国政府は、少数民族のウイグル族を主に標的としているこの弾圧について、ここ数年中国各地で起こっているナイフや自動車を用いた散発的な攻撃を準備した分離独立運動の鎮圧に貢献していると述べている。
新疆ウイグル自治区のすぐ南に位置するチベット自治区では、軍による事実上の占領がもう何年も続いている。
習氏が香港情勢に業を煮やし、“一国二制度”の繰り上げ終了を命じる様子は想像に難くない。
中国国内で当局の方針に大っぴらに反対する唯一の事例が続いているのは、この制度のせいだからだ。
“できものを切り取るのは痛いとはいえ、悪をのさばらせるよりはましだ”
“三国志演義”には、そんな有名な警句も見受けられる。
習氏は香港の騒動を力でねじ伏せることはしないかもしれないが、香港を従わせるために政治的な圧力を強めていくことは、ほぼ間違いない。
もし中国政府が、英国の植民地だった香港にはとにかく甘いなどと思われてしまったら、国内の他の地域に住む人々にデモが及ぼす影響は危険極まりないものになる。
香港市民は皇帝に公然と反旗を翻しても罰せられずに済むというのであれば、上海や深圳、北京でも試してみない手はない、という話になるからだ。
権力を掌握した2012年以降、習氏は“中華民族の偉大なる復興”を自身の最重要目標に掲げている。
もしこのビジョンを実現するのであれば、現状では重要な要素が一つ欠けることになる。台湾という、独立している島国だ。
中国政府は以前、民主主義の台湾のモデルになり得るものとして香港を引き合いに出していた。しかし、このアイデアはもう10年近く前から、誰も真剣に言及しなくなっている。
習氏はこのところ、台湾問題について、何らかの形で軍事力を使う解決策にますます傾いているように見える。
台湾政府のある高官は先日、筆者と話をした際、中国政府は現在、台湾への武力侵攻の軍事的・政治的コストを“日次ベースで”評価していると教えてくれた。
武力侵攻を手控えている最大の要因は、失敗する可能性があること。特に、侵攻されたら介入するという約束を米国が果たすことで失敗する恐れがあることだ。
習氏が中国の歴史から学んで知っているように、王朝を終わらせる最も手っ取り早い方法は戦争に負けること、特に自分から仕かけた戦に負けることだ。
中国が今のように強い国に見えるのは、おそらく二百数十年ぶりのことだ(少なくとも、外部から見る限りはそうだ)。
そして、この帝国の中央集権化の勢いは強まる傾向にあると見られる。しかし、その周縁部の支配は、支配下に置こうとしている臣民の離反を招く苛烈かつ極端な手段を用いてようやく実現しているのが実情だ。
中国政府には、いわゆるソフトパワーを用いて他者を引き寄せる能力がほとんどない。
現在の国境の内側に住む多くの人々にとってもそうなのだから、中国の台頭を怯えながら見つめている近隣諸国の国民にとってはなおさらだ。
現在の抑圧政策の問題点は、中国が最終的に政治的な自由化を経験するときに――すぐに実現するとは筆者も思わないが、今後数十年のうちに行われる可能性はまだ残っている――香港や新疆ウイグル自治区のような周縁部が分離独立に向けて全力を尽くすということだ。
強い支配が緩むときに何が起こるかは、旧ソビエト連邦の解体を思い出せばよく分かる。
中国が改革されたら、そしてもし連邦国家になったりしたら、チベットや新疆、台湾、香港などはおそらく、中国に残った方が経済的にも政治的にも豊かになれるだろう。
それにもかかわらず、分離独立を求める運動が沸き起こるのだ。
今日の中国政府が取っている行動ゆえに、統一と分裂を繰り返す中華帝国のサイクルは、今後も長きにわたって続くことになるだろう。
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